たまにはコンピも良いってことで、2023年5月12日リリースのブラジル第二の都市であるリオデジャネイロの現行音楽に焦点を当てた作品である「Hidden Waters: Strange and Sublime Sounds of Rio de Janeiro」をご紹介。
全21曲、28組のアーティストによる楽曲が収められた今作はホントにヴァラエティーに富んでいて聴き応え充分。リオの音楽シーンの紹介的なコンピなので、このアルバムの為というよりも各アーティストの代表曲というか近年リリースされてるものの中からバランス良くリストアップされてるといった感じ。
レーベルであるMR BONGOのリリース文を参照して頂くのが分かりやすいので以下に載せておきます。
アナ・フランゴ・エレトリコ、アヴァ・ホーシャ、バーラ・デゼージョ、アントニオ・ネヴィス、チアゴ・ナシーフ...。今再びブラジル音楽の中心となりつつあるリオデジャネイロの現行音楽シーンにスポットをあてた画期的なコンピレーション。
1763年に首都となり、1822年の独立後もブラジルの文化経済の中心として華やかな発展を遂げた都市リオデジャネイロ。音楽に焦点を当ててみても、ヨーロッパの系譜を汲む都会のエリート層にアフリカ系の解放奴隷、地方の出稼ぎ民が交流し独自の音楽を醸成。主要レコード会社やマスメディアもおおむねリオを拠点としていたこともあり、ショーロやサンバ、ボサノヴァ、トロピカリア、MPBは、すべてリオで生まれブラジル全土へ発信されていった。しかし1960年のブラジリアへの首都移転、そして経済の中心が次第にサンパウロへと移ることで、いつしかブラジルにおける音楽産業もサンパウロが中心となっていく。2016年の世界的スポーツイベント開催後は経済も冷え込み、いつしかミュージシャンにとって生きるのが厳しい町となっていたリオだったが、ここ数年で復権ともいえる目を瞠るような動きを見せている。そんなリオの現行音楽シーンをとらえた画期的なコンピレーションが本作だ。
監修はラテンアメリカの音楽と文化を世界へと発信しているウェブサイトのSound and Colours。ブラジル版ヌーヴェル・ヴァーグを牽引した映画監督グラウベル・ホーシャの娘アヴァ・ホーシャを中心に、ブラジルジャズ界の新星として注目を浴びるアントニオ・ネヴィス、日本のコーネリアスとのコラボでも知られるチアゴ・ナシーフ、リオのインディーシーンにおけるアイコンとなりつつあるアナ・フランゴ・エレトリコ、そしてそのアナがプロデュースし昨年末のラテングラミー賞も獲得したバーラ・デゼージョといった日本でも紹介されてきた才能に加え、そんな彼らを輩出したボサノヴァ、サンバ、カンドンブレ、ローファイ、ガレージ、サイケ、アヴァンギャルド、ジャズ、ファンクなどなど、リオの多彩でユニークな現行音楽シーンを余すことなく収録。
アートワークは同地の音楽作品を多く手掛けるカイオ・パイーヴァが担当。また教授も務める音楽評論家ベルナルド・オリヴェイラ、気鋭音楽ジャーナリストのレオナルド・リショッチによるライナーノーツに加え、アーティスト自身によるセルフライナーノーツも収録と資料性も大充実。2020年代のブラジル音楽を牽引するであろうリオの現行音楽シーンを把握するにはマストといえるコンピレーションだ。
中でも気になったというか一番好きなのはリオの鬼才と呼ばれるドラマーでありトロンボーンを始め多彩な楽器を操るアントニオ・ネヴィスとドラマーであるThiaguinho SilvaによるM19「Das Neves」。これは新録のようで軽快ながらも重厚感のあるジャズサンバなナンバー。後半のブロウするフルートが何ともツボ。やっぱりジャジーな音が好きだし耳馴染みもイイ。
他にも知ってるアーティストや楽曲もあれば全然知らなかったものもあるので、ひと通り聴いたものの、もう少しじっくりと何度か聴こうと思うし、ここからまた音楽の幅も広がっていくのが嬉しい。
ぜひ聴いてみて下さいな。
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リオの鬼才とウィーンのビートメーカーによるジャズヒップホップ「Jules Hiero & Antônio Neves - Nove Midén」
ブラジルはリオデジャネイロのドラマーでありトロンボーンを始め多彩な楽器を操る鬼才アントニオ・ネヴィスと、オーストリアはウィーンのビートメーカー/プロデューサーであるジュール・ヒエロによる2021年5月 ...
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